東洋医学でいう「虚」とは、体力・抵抗力の減退や衰えに対して使われる概念で、”不足・不充分・足りないこと”を意味します。
「虚証」とは、病気のある過程で身体が消耗している状態を指します。
例えば手術後や大病の後に元気がない、すくに疲れてしまう、食欲不振、痩せていくなどの
症状をまとめて表現すると「虚証」といいます。
虚証は、何が不足するかによって「気虚」「血虚」「陰虚」等に分類されます。
「虚」の反対の状態を表す概念に、「実」があります。「実」とは主に、病邪の勢いまたは強さに対して使う概念です。「実」という言葉には”充足、堅実、足りる”という意味があります。
「実証」とは、病気のある段階に病邪(≒病気の症状)が優勢となりその悪さが顕著に出ている状態を指します。
例えば、突然の寒暖変化により感冒にかかった場合、寒気、発熱、鼻づまり、鼻水などの症状を
まとめて表現すると「実証」といいます。
「虚証」に対して、東洋医学では不足したものを補う方法をとります。
反対に、「実証」に対しては不要なものを排出する方法をとります。
もちろん病気の進行の具合により最初に「虚証」であっても途中に「実証」に転じることもあれば
最初に「実証」であっても途中で「虚証」に転じることもあります。
東洋医学では、常に体力や抵抗力と病気との力関係を見極めながら、その都度、身体全体の状態に合わせて、攻めていくか守りに入るかを決め、治療を行います。